松本清張ドラマ「疑惑」の原作
松本清張の小説が原作。1982年に発刊され、すぐに映画化されています。
その時の映画がこちら。
原作は読んでいないのですが、ネットで調べたところ今回のドラマとは少し設定など違うようです。
今回のドラマでは静岡の熱海が舞台でしたが、小説では場所も違うようですし、今回、米倉涼子さんが演じた佐原卓子弁護士も原作では男性弁護士・佐原卓吉みたいです。そして原作では、週刊誌の記者の秋谷は新聞記者。散々、球磨子を悪女のように書き立ててしまったが、球磨子が無実の証拠を掴んだという話を佐原から聞き、球磨子が無罪で釈放された後に報復されることを恐れ…←ここからはネタバレになるので伏せます。
「疑惑」は映画化もですが、テレビドラマ化も何回もされているだけあって、原作に映像化、演出したくなる魅力がたくさんあるんでしょうね。
松本清張ドラマ「疑惑」のあらすじ
白河球磨子(黒木華)と夫の福太郎が乗った車が、静岡県の港から海に突っ込み妻は助かったが、夫が死亡する事件が発生する。
妻の球磨子が受け取る予定の保険金は13億5000万円。そのことから保険金殺人を疑われ、世間では悪女として取り上げられていた。ブラック企業の弁護を最近は担当し、どんな手を使ってでも真実を追求、法外な弁護料を取る事でも知られ「最低の弁護士」と呼ばれる佐原卓子(米倉涼子)は、弁護士の原山正雄(津川雅彦)から体調が思わしくないため、ある女性の弁護を引き継いでほしいと、直々に頼まれる。ある女性というのが、今、話題となっている事件で「鬼クマ」と呼ばれている白河球磨子だった。
卓子は弁護士として担当する以上、どんな事件でも勝ちに行くつもりだが、球磨子と接しているとどれが本当の彼女なのか、彼女の本心なのかがわからず、本当に彼女が夫を殺したのか、殺していないのかもわからなくなっていく。実際に球磨子は前科3犯で、球磨子を知っている人から話を聞けば聞くほど、真っ黒に思えてくるのだった。
卓子なりの方法で、球磨子という人間、事件の真相に迫っていく
松本清張ドラマ「疑惑」の感想
感想・・・一言で言うと、松本清張すごい!!って感じです。
嫌な女を書かせたらピカイチですね、本当に。
実際にはここまですごい人はあったことないですが、球磨子のような女性ってやっぱりいると思います。
黒木華さんは、ぱっと見はすごく優しそうで柔らかい雰囲気だからこそ、狂気に満ちた時の演技に凄みがあるというか、最初はそんなに悪い人に思えなかっただけに、やっぱり本物の女優さんですね。
そして今まで松本清張作品の悪女を演じてきた米倉涼子さんが、今回は弁護士役として出演されていますが、本当にため息が出るほど綺麗ですね。完璧な女性がとってもよく似合うし、綺麗だからこそ嫌味がない。
球磨子の境遇、育った環境は確かに同情できる部分はたくさんあります。子供時代の映像は、正直涙をこらえてみていました。だからと言って、球磨子がこれまでしてきたことが許されるわけではありませんが。また育児放棄をする母親ってどんな心境なのかな?なんて思っていましたが、球磨子を捨てた母役のYOUさんの演技もケロッとしていて、意外とこのくらい罪の意識がない人ではないと子供を捨てたりなんてしないのかもなぁって、妙に納得できる演技でした。
欲しいもの全てを手に入れているようにも見える弁護士の卓子と球磨子のコントラストがこのドラマの見どころでもあると思います。
でも実際は卓子が何度か球磨子に諭したように、卓子は最愛の夫を亡くし、全てを手に入れているわけではないんですよね。夫の不幸をつい忘れてしまうほどに幸せに見える卓子と、事件が起きるまでは夫がいて何不自由なく暮らしていたのに満たされない球磨子。原作は読んでいないのでわかりませんが、もう少し悪女の方にフォーカスが当てられていたような気がします。でも今回のドラマの演出では、同じ夫を亡くした女性のコントラストも一つの大きなテーマなのかな?と感じました。
途中で、球磨子が1人目の夫から2人目の夫に乗り換えるシーンや球磨子がお店の女の子の顔を焼くシーンが出てくるのですが、子供の虐待や暴行殺人の罪を犯す人たちの中にも、球磨子と同じ問題を抱えている人もいるのかもしれないなぁと思いました。かといって、もちろん犯罪が許されるわけでは決してありませんが。
いろんな視点から見ることができる、面白いドラマでした。
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